概要
- 課題の発生
- 事前の仕込み
- アイテムの用意・子細工など
- 読者にとってその意図は不明(後述)
- 具体的危機の発生
- 追い詰められる
- 仕込みを利用して解決
「危険発生前の仕込み」は、対処すべき具体的な危険が生じる前に、キャラクターがその解決策を講じておく手法である。ここでいう"具体的な危険"とは、例えば「宝石を盗む」という大きな課題に対して、「警察がすぐそこまで迫っている」のように、大きな課題解決の過程で生じる具体的な危険である。
主にこの仕込みは、課題開始直後の緊張が低い段階でキャラクターが意図的に行い、その仕込みの意図は読者に知らされない。場合によっては、たまたま拾ったものなど、偶然の出来事の産物が仕込みになることもある。
このストロークには、危険を明示する前に仕込みを済ませることで、その仕込みがどのように働くのかという予測を困難にし、驚きを高める効果がある。
意図を知らせないためには
仕込みの意図が明瞭な場合、最終的な解決の際の驚きが減じる。そのため、仕込み時点では主人公の意図が読者に伝わらないようにする必要がある。一方で仕込み自体は読者に明示しなければいけないわけだから、爆弾を仕掛けるといったあからさまな仕込みでは意図を隠すことができない。
意図を隠すためには、具体的には以下のような手法を用いることができるだろう。
隠された前提
意図を隠す一つの方法は、その仕込みがもたらす結果を予想するために必須の前提を読者に知らせないでおくことである。
例えば、拾っていたどんぐりは「爆発どんぐり」だった、偽装したバッジは貴族の子息を表すものだった、デス・ビーにはさっき塗りたくった暗黒あんこに集まる習性がある、など。
言い換えれば、課題解決の鍵に、「キャラは知っているが読者は知らない設定」を利用する、ということである。
ただし、新前提を利用する以上、納得感は少ない。あまり引っ張った状態で使うとあと出し感を与え、読者の期待が一気に冷めることになる。
序盤にメリハリを与えるための小さなイベントや、より大きな危機の前の見せかけの解決、ここで提示した新前提が今後の課題解決の伏線になっている等、あくまでサブウェポンとして使うことになるだろう。
仕込みの一部
仕込みの一部だけを描写し、核心的な部分は描写しない方法である。
仕込みの核心的な部分が「相手のカードに仕込みをする」なのであれば、それを実行するための一連の流れ──例えば「水をこぼして相手の注意を引き、その隙に相手のカードに仕込みをする」の「水をこぼして」の部分だけ描写する。
そうしてあとから、「あのときに細工をしておいたのさ!」と種明かしをするという段取りである。
伏線としてはやや弱くなりがちなので、単独で用いる場合クライマックスには使用しない方がいいだろう。もちろん、そのほかの戦略や伏線と併用(例えば、水をこぼすと相手が特別注意を引かれるような理由がある)すれば、クライマックスでも十分戦えるストロークになる。